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私のがん闘病記
これは私が2010年に子宮頚がんと診断され、当時感じたことや、同じような境遇になった方へ向けたアドバイスをまとめた記事です。過去の私がネットの同じ患者さんの情報・体験を参考にしてがんに立ち向かったように、お困りの方の助けになれば幸いです。
CHAPTER 01
育児中心から仕事中心へ、その転換期に突然・・・
私は9年前にがん検診で異常が見つかり子宮頸がんと診断されました。
それは3人の子供たちが小学生になり、徐々に育児中心の生活から麻酔科医としての仕事の比重を増やしつつある時の突然の出来事でした。
生活は一変し、病院へ行っては検査を受け、その結果を聞きに行く。先生の説明に一喜一憂し、子供たちが眠ってから夜通しパソコンに張り付いて、泣きながらネットで病気や治療について調べまくりました。私は医師なので病気や治療については理解ができました。
しかし、辛い気持ちや不安な気持ちはどうしようもなく、持って行き場のない感情に押しつぶされてしまいました。
「がんは嫌い!がんになりたくなかった!」いつもそう思っています。
CHAPTER 02
検査結果待ちのつらさと、診断後に改めて実感するつらさ

がんのつらさは人それぞれだと思いますが、私はがんの診断がつくまでが特につらかったです。検査後結果がでるまで時間があるので、その間は生きた心地がしませんでした。こわくて、不安でたまりませんでした。そして診断がついたらついたで、その現実に改めて落ち込みました。治療法の選択は可能な限り時間をかけ、いろんなことを勉強し挑みました。いよいよ手術の日。治療が終わったらがんともお別れだと思っていたので、その日を待ち望んでいましたが、とんでもない!がんはずっと続くのです。
術後の説明で「取りきれた」と説明されましたが、病理の結果を待たなければ詳細はまだわからない、という状態が2週間続きました。病理結果、手術の時の所見によっては追加治療が必要になることがあります。こうして次から次へと問題が起こり、その都度選択を迫られる。がんって本当に大変な病気です。
CHAPTER 03
病院選び、医者選び

良い医療者との出会いは重要です。こちらの病気をきちんと把握し、的確な診断と治療をおこない、アドバイスをしてくれる医療者。説明も丁寧で話しやすければ満点です。
しかし、実はこれ、なかなか難しいのです。人間には「相性」があり、他人に聞いた最高の先生が、必ずしも自分にとっての最高の先生とはならないからです。かといって嫌だったら止めればいいという話でもありません。自分の病気を診てくれるスタッフがいる病院を選び、担当となった医師と「うまくやる」ことも、がんの治療ではとても重要なポイントとなります。
また、正しい情報を得ることも大切です。適切な情報を提供してくれる担当医なら、病院に通うだけで問題は解決できるでしょう。診察は時間にも制限がありますので事前に何を知りたいのか、どうやって聞いたらよいのかなど準備しておきましょう。聞けなかったこと、分からなかったことがあれば看護師などその他のスタッフに聞くことができます。まずは自分が何を知りたいのかを明らかにし、それを聞き納得する。とても大切なことです。
CHAPTER 04
先生の話は難しい。でも、理解できるまで聞いてみることも重要。

医師からの説明は時にとても込み入った話になり難しく感じられると思います。先生によってはついつい難しい専門用語を使って説明してしまう人もいます。聞き返せないまま診察室を後にしたり、分かったつもりで家に帰ったら「あれ?」なんてこともよくあるでしょう。
そんな時は必ず次の診察時に聞くようにするか、まずは看護師さんや相談員に聞いてみましょう。自分の病気のことは自分で理解し、大切なことは自分が中心となって決めることが大切です。
CHAPTER 05
自分がどうしたいか、意思表示は明確に

医療の現場の様々な場面で「どうしたいか」という意思表示が大切になります。
例えば、薬が2種類あり、それぞれの効能はほぼ同じで副作用が異なる場合、患者さんに選択してもらうことがあります。自分の希望、大切にしていること、優先事項を意思表示し、それらをふまえて相談して決めることができます。決して「おまかせします」などと言わないことです。
CHAPTER 06
気持ちを吐き出し整理する場所の重要性

私が告知された時、誰かに話したい、聞いてほしい・・・そう思いました。そんな私の話を聞いてくれたのは、職場の医師仲間達でした。彼女達は当時の私の不安な気持ちを、ただただ聞いてくれていました。とても心地よかった事を覚えています。
では、なぜそれが心地よかったのか・・・。それは感情的な同情なく、常に病気のことを正確に把握したうえで話を聞いてくれたこと、そして間違ったことを言わなかったことが一番の理由だと思います。私自身、胸の内を言葉にして話しをすることで、思っていることが整理でき、その結果何がひっかかっているのか、不安に感じているのかが明らかとなり、一歩も二歩も前進できました。
がんと闘うのは自分です。誰も代わってはくれません。でも、こうやって人の力を借りながら乗り越えることで、ほんの少し楽になれると思います。
CHAPTER 06
ネットで広がる、患者同士の交流の場

さらに私が救われたのは、ネット上で見つけた「女性特有の疾患患者のための情報交換所」でした。そこには実際に子宮癌や卵巣癌、乳癌の患者さんがたくさんいて、活発なやり取りがおこなわれていました。初めはその様子をただ眺めていた私でしたが、医師から手術・治療について説明を受けてからは、その情報交換所にどんどん質問を投稿する様になりました。かなりの数の患者さん達とメールでやり取りした結果、医師からは聞けなかった手術後の生活や、後遺症の話まで詳しく聞くことができました。
教えてもらった情報がすべて自分に当てはまるわけではありません。しかし医師からの説明だけではどうしても決断できず、少しでも多くの情報が欲しかった私にとって、この情報交換所での交流はかけがえのないものとなりました。
CHAPTER 07
がんと向き合い決断する「患者力」を身に付ける
がんと向き合うのはつらく、苦しく、長い闘いになります。精神的に滅入ってしまうこともあるとは思います。それでも終始「先生を信用していますので、お任せします。」という受け身でいるのではなく、患者さん自身が家族と理解しながら一緒に選択・決断をする「患者力」を身に付けることが、これからの時代には必要なのではないかと感じています。
がんは誰かに解決してもらうことはできませんし、決めてもらうこともできません。がんになったのも自分、治療を受けるのも、がんと生きていくのも自分なのです。悲しい運命ですが、いろんな情報を集め、自分の生き方に照らし合わせながら、治療を選択しがんと共に生きること。それが大切だと思います。
CHAPTER 08
がんと向き合う人たちに寄り添う存在でありたい
がんと言われたけど・・何が何だかわからない。どこに行けばいいの?
そう思っているがん患者はたくさんいると思います。病院には種々の支援サービスがあり専門知識のある担当者が随時対応してくれます。受付から始まり、診察室の中、待合室、院外まで種々のサポートが準備されているので利用しましょう。
それでもわからないことや不安なこと、聞いてもらいたいことは尽きないものです。そんな時、がん患者寄合所を利用していただきたいと思います。ぴぃすは静かな空間でゆっくりお話ができる環境です。気持ちを吐き出し、正しい情報を得て、自分の病気、病状、治療にしっかり向き合うことができるよう全力でサポートします。病気は誰も代わってくれません。自分で向きあい乗り越える力を一緒に育みましょう。